齋藤 優衣さん
日経育英奨学会で学び、働き、夢を追いかける学生たちの「いま」をお届けします。


部活の朝練やバイト経験が新聞配達の仕事に生きている
母が自営で仕事をしているのを見てきたので、いつか自分の店を持つのが夢なんです。国立音楽院を志望したのは楽器の工房を持ちたいという夢ができたから。ただ、1度は別の専門学校に通い、その後1年間浪人生活を送っていたので、親に負担をかけずに自分自身で進学をしたかった。それが、新聞奨学生になろうと思ったきっかけです。高校生の頃は吹奏楽部の朝練があり、早朝3時、4時に起きる毎日。カラオケ店やファーストフード、引越しなどのバイト経験もあり、体力には自信がありました。だから、新聞配達の仕事にも体力面では全く不安はありませんでした。実際、新聞配達の仕事での早起きが苦になったことはないんです。

私の配達地域は住宅が多いのですが、配達の経路が示された順路帳を使ったり、Googlemap などを使えば、迷子になっても困らない。これから新聞奨学生になろうと考えている人の中に方向音痴だから不安という人がいたら、大丈夫だよと伝えてあげたいです。専売所の先輩たちは、近道を探したり、効率の良い道順を自分なりに組み立てたりと工夫している人が多いから、仕事に困って相談すると教えてくれます。何事も自分よりも経験の多い先輩から教わることが大事だと、この仕事を通じて身をもって学びました。
毎日配達をしていると、時には配達ミスをすることも。悔しくて泣いたこともあります。でも、私の場合は、泣くことで発散されるタイプなので、しっかり泣いたら後は引きずらない。配達中に、顔見知りになった子供たちが「ありがとう」と声をかけてくれることもあり、励みになることも多いんですよ。

楽器のリペア工房を開店する将来の夢に一歩ずつ近づきたい
新聞配達の仕事と学業の両立は、決して楽とはいえません。でも、アルバイトをしながら学校に通う学生も多いし、自分だけが大変なわけではないはず。大変だと嘆くよりも、限られた時間を有効に使って学生生活を充実させたいと考えてきました。学校で学ぶことは新鮮なことばかりです。吹奏楽部での楽器の演奏経験はあっても、楽器の内部は未知の世界。リペア科では実際に分解して組み立てる経験ができるので、構造を詳しく知ることができて毎日発見の連続です。特に嬉しいのは、有名な楽器メーカーの技術者など、その道のプロから学べること。プロの手の動きを間近で見学できるのは贅沢だなぁと感動します。

2年生になってから夜間のコースに通うようになったことで、時間の余裕も生まれました。授業の後に学校の友人たちと過ごしたり、部屋で勉強したりする時間もできたことで、学生生活を満喫しています。就職後に昇給の制度があることを知って、今はTOEICの勉強に力を入れています。楽器のリペアの仕事は人材の募集自体が少ないので就職活動に苦労しましたが、この冬、念願だったリペア販売への就職が決まりました!だから今、次のステージに飛び込むのが楽しみで仕方がないんです。

経験を積んで、いつか楽器の修理工房を併設したカフェをオープンするのが夢。その夢を叶えるために、まずは卒業後にしっかりと技術を身につけたいと張り切っています。そしてもう一つの楽しみは、友人たちと卒業旅行に行くこと。実は新聞奨学生をやり切ったご褒美の旅行でもあるんです。ロンドン、ミュンヘン、ウィーン……音楽や芸術の街を友人たちと訪れるのを今からワクワクしているんです。
